次世代光エンジン「COUPE」の特徴と可能性

COUPE(Compact Universal Photonic Engine)は、次世代の高性能計算(HPC)やデータセンター向けに設計されたシリコンフォトニクス技術の統合プラットフォームです。その目的は以下の3点に集約されます:

  1. 高帯域幅通信の実現
    データ量の増加に対応し、超高速かつ効率的なデータ伝送を可能にします。
  2. 低消費電力
    電気-光学インターフェースでの損失を最小化し、エネルギー効率を大幅に向上させます。
  3. コスト効率
    半導体製造技術を活用し、量産性が高くコスト効率に優れたソリューションを提供します。

COUPEは、以下の技術的特徴を通じてこれらの目的を達成しています:

  1. 異種統合(Heterogeneous Integration)
    • 半導体ノードの異なる電気IC(EIC)とフォトニックIC(PIC)を高密度銅直接接続(SoIC)。
    • SoIC接合により寄生容量、インダクタンス成分、光結合損失を最小化。
  2. 広帯域カプラの採用
    • 垂直広帯域カプラ(BBC):低損失(-0.3dB)で、広いアライメント許容範囲(10µm)。
    • エッジカプラ(EC)およびグレーティングカプラ(GC)に対応。
  3. 消費電力の最適化
    • マイクロバンプや従来の3D積層技術と比較して、40%の消費電力削減を実現。
  4. モジュール化設計
    • シリコン導波路や多層導波路を利用し、光学ネットワークを最適化。
    • 最大44.9Tbps/mmの帯域幅密度を達成。

他技術との差別化

COUPEは、以下の点で他の光エンジン技術と差別化されています:

  1. 従来のマイクロバンプ技術との違い
    • 寄生成分(静電容量、挿入損失、反射損失)を85%以上削減。
    • マイクロバンプ技術では達成できない高データレート(112Gbps以上)と低消費電力を実現。
  2. モノリシック統合との違い
    • モノリシック統合ではEICとPICの技術ノードを揃える必要があり、設計の柔軟性やコストに制約があります。
    • COUPEは異種統合を採用し、技術ノードの違いを克服。
  3. 拡張性と応用範囲
    • 将来の異種光学コンポーネント(III-Vレーザー、半導体光増幅器など)との統合が可能。
    • Wafer-Level System Integration(WLSI)に対応した設計。

今後の課題

COUPE技術のさらなる発展には、以下の課題が挙げられます:

  1. 異種材料の統合
    • III-V材料のような非シリコン素材との効率的な統合が必要です。
  2. 量産性の向上
    • 高精度な製造技術の改善により、大規模量産に対応する必要があります。
  3. システムレベルでの評価
    • 実運用環境での信頼性評価と最適化が求められます。
  4. コスト競争力の強化
    • 従来技術に対するコスト優位性をさらに高める必要があります。

まとめ

COUPEは、シリコンフォトニクス技術を基盤とした次世代光エンジンとして、HPCやデータセンターにおける高帯域幅通信とエネルギー効率の向上を実現します。他の技術に比べ、卓越した性能、設計柔軟性、コスト効率を兼ね備えており、今後の課題を克服することでさらに幅広い応用が期待されます。

出典

1. High Bandwidth and Energy Efficient Electrical-Optical System Integration Using COUPE Technology

2. Integrated Optical Interconnect Systems (iOIS) for Silicon Photonics Applications in HPC

3.  Heterogeneous Integration of a Compact Universal Photonic Engine for Silicon Photonics Applications in HPC

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