次世代光エンジン「COUPE」の特徴と可能性
COUPE(Compact Universal Photonic Engine)は、次世代の高性能計算(HPC)やデータセンター向けに設計されたシリコンフォトニクス技術の統合プラットフォームです。その目的は以下の3点に集約されます:
- 高帯域幅通信の実現
データ量の増加に対応し、超高速かつ効率的なデータ伝送を可能にします。 - 低消費電力
電気-光学インターフェースでの損失を最小化し、エネルギー効率を大幅に向上させます。 - コスト効率
半導体製造技術を活用し、量産性が高くコスト効率に優れたソリューションを提供します。
COUPEは、以下の技術的特徴を通じてこれらの目的を達成しています:
- 異種統合(Heterogeneous Integration)
- 半導体ノードの異なる電気IC(EIC)とフォトニックIC(PIC)を高密度銅直接接続(SoIC)。
- SoIC接合により寄生容量、インダクタンス成分、光結合損失を最小化。
- 広帯域カプラの採用
- 垂直広帯域カプラ(BBC):低損失(-0.3dB)で、広いアライメント許容範囲(10µm)。
- エッジカプラ(EC)およびグレーティングカプラ(GC)に対応。
- 消費電力の最適化
- マイクロバンプや従来の3D積層技術と比較して、40%の消費電力削減を実現。
- モジュール化設計
- シリコン導波路や多層導波路を利用し、光学ネットワークを最適化。
- 最大44.9Tbps/mmの帯域幅密度を達成。
他技術との差別化
COUPEは、以下の点で他の光エンジン技術と差別化されています:
- 従来のマイクロバンプ技術との違い
- 寄生成分(静電容量、挿入損失、反射損失)を85%以上削減。
- マイクロバンプ技術では達成できない高データレート(112Gbps以上)と低消費電力を実現。
- モノリシック統合との違い
- モノリシック統合ではEICとPICの技術ノードを揃える必要があり、設計の柔軟性やコストに制約があります。
- COUPEは異種統合を採用し、技術ノードの違いを克服。
- 拡張性と応用範囲
- 将来の異種光学コンポーネント(III-Vレーザー、半導体光増幅器など)との統合が可能。
- Wafer-Level System Integration(WLSI)に対応した設計。
今後の課題
COUPE技術のさらなる発展には、以下の課題が挙げられます:
- 異種材料の統合
- III-V材料のような非シリコン素材との効率的な統合が必要です。
- 量産性の向上
- 高精度な製造技術の改善により、大規模量産に対応する必要があります。
- システムレベルでの評価
- 実運用環境での信頼性評価と最適化が求められます。
- コスト競争力の強化
- 従来技術に対するコスト優位性をさらに高める必要があります。
まとめ
COUPEは、シリコンフォトニクス技術を基盤とした次世代光エンジンとして、HPCやデータセンターにおける高帯域幅通信とエネルギー効率の向上を実現します。他の技術に比べ、卓越した性能、設計柔軟性、コスト効率を兼ね備えており、今後の課題を克服することでさらに幅広い応用が期待されます。
出典
1. High Bandwidth and Energy Efficient Electrical-Optical System Integration Using COUPE Technology
2. Integrated Optical Interconnect Systems (iOIS) for Silicon Photonics Applications in HPC